全身性エリテマトーデス(SLE)とは
素人が素人のためにまとめた素人のための全身性エリテマトーデス(SLE)情報です。
※あくまで一般人の知識です。内容に間違いがある恐れがあります。
全身性エリテマトーデス(SLE)とは
「
全身性エリテマトーデスは英語で「Systemic Lupus Erythematosus」と言い、
一般的にはその頭文字をとって「SLE」と呼ばれます。
「
狼に噛まれた痕のような紅斑が皮膚に現れることから、この名前が付けられたといいます。
難病指定されている自己免疫疾患の一種であり、原因や治療法は今のところ確立されていません。
症状の悪化と
私達の体には「免疫」と呼ばれる機能がありますが、その免疫機能に異常が起きてしまうのがSLEです。
「自己抗体」という、自分の体を攻撃する物が体内に生成されてしまい
それが原因で全身に様々な症状が引き起こされてしまうのです。
SLEの患者数は、全国に6~10万人とされています。
そのうち、男女比は1:9~1:10ほどで、中でも10代後半~40代の女性の発症率が非常に高く
妊娠可能な年齢の女性に発症しやすいのではないか、と言われています。
症状
全身症状
発熱
症状が悪化した際に38度以上の発熱が起きやすいです。
偏頭痛を伴うことも多いです。
全身倦怠感
非常に疲れやすくなります。
筋力の低下や、原因の不明な体重減少なども症状の一つです。
同時に食欲不振になることもあります。
皮膚症状
紅斑
「SLE」の名称の由来にもなった、
狼に噛まれたような跡の紅斑が皮膚に現れることがあります。
最も有名なのは、頬に現れる「蝶状紅斑」と呼ばれるもので
両頬に蝶が羽を広げたような模様の発疹が現れます。
頬以外にも、まだら状や斑点状の赤い発疹が現れることがあります。
光線過敏症
特に皮膚の色素が薄い人に、日光に対する過敏症が起きます。
スキーや海水浴などで強い紫外線を浴びた後に、
症状が悪化することがあります(全体の約40%)。
口内炎
口の奥や硬口蓋、頬の内側に潰瘍ができます。
多くは粘膜が抉れたように凹んだもので、痛みを伴わないことが多く
人に指摘されるまで気づかないこともあります。
脱毛
朝起きた際、枕にたくさんの髪の毛が付いていたり、
円形脱毛が起きたり、髪の毛の量が減ることがあります。
毛髪自体が傷みやすくなることもあります。
関節痛・関節炎
ほぼ全てのSLE患者にみられる症状(約9割)です。
指や肩、肘、膝などに腫れを伴った痛みが起きることがあります。
日によって痛む関節の場所が変わる(移動性)こともあります。
関節リウマチのように骨破壊は伴わないため、後遺症は残りません。
腎障害
8割以上のSLE患者に、腎臓の病変が起こります。
約半数は「ループス腎炎」と呼ばれる腎炎で、悪化すると命に関わることもあります。
急性期の症状として現れるのは蛋白尿や血尿で、
これも自覚症状が現れないことが多いため注意が必要です。
治療法
ステロイド剤
魔法の薬と呼称される、副腎皮質ステロイド薬が使用されます。
ステロイドを使用しなかった場合、5年生存率は50%以下となってしまうため
なくてはならない薬となっています。
ステロイドは健康な人の体内で1日に約5mg生成されている物質で、
重症の場合は80mg以上から、軽症なら5mgまで症状に合わせて経口投与します。
ステロイド抵抗性の高い腎炎や血小板の減少、溶血性貧血や肺炎などの重篤な症状がある場合や、
副作用などの問題で大量のステロイドを長期投与することができない場合は、
3日間連続で500~1000mgのステロイドを点滴投与する「ステロイド・パルス療法」が行われます。
1日に5~10mg程度のステロイド剤の服用で症状が悪化しない状況が
SLE患者の目標とされる寛解の状態とされています。
ステロイド剤の副作用としては、顔が丸くなる満月様顔貌(ムーンフェイス)や、
食欲増進、糖尿病、感染症、骨粗鬆症などがあります。
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)
解熱剤、鎮痛剤などです。
発熱や痛み等の症状を和らげるために使用されます。
重篤な症状が現れていない場合や、関節炎などの局所症状が特に強い場合に用いられますが
消化管や腎臓への影響が起きることがあるため、必要に応じての投与になっています。
免疫抑制薬
ステロイド剤の効果が不十分な場合や、副作用が強い場合に使用されます。
代表的なものとして、シクロホスファミド(エンドキサン、抗ガン剤のこと)の点滴投与や、
最近使用が認可されたミコフェノール酸モフェチル(略称MMF、セルセプト)などがあります。
即効性があって特に重篤な腎炎や肺炎に効果的なものはシクロホスファミドですが、
生殖器障害等の副作用がとても強いため、緊急性が低い場合は
ミコフェノール酸モフェチルの使用が推奨されるようになってきています。
免疫調整剤
抗マラリア薬として知られている、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)の使用が
日本では2015年から認可されました。
なぜ効果があるのか判明していませんが、免疫疾患への効果がある薬剤です。
特に皮膚や関節症状への効果が高いとの研究結果が出ています。
しかし副作用として視力の低下や失明が起こるリスクがあるため、
この薬を服用する場合は半年~1年に1度の眼科受診が義務付けられています。
検査
血液検査
採血による検査があります。
「抗核抗体」が陽性であれば、SLEである可能性が高いとされています。
抗dsDNA抗体、抗Sm抗体などが陽性の場合、SLEであると診断されやすくなっています。
SLEの場合、「補体値」が低下します。
補体は免疫細胞が働くときに使用される物質で、
病気の勢いが強い=免疫機能が高まっている=補体がたくさん使われているため、
血中の補体の量が減少します。
そのため、病気の強さを調べるために血中の補体の量を測定します。
赤血球、白血球、血小板の低下がみられることがあります。
健康診断でも貧血かどうか調べられますが、それよりも詳しく、
リンパ球の数や血球の奇形が存在しないか等も検査します。
その他にも、炎症が起きていないか、臓器への障害がないかなどの
様々な症状を調べるために血液検査が行われます。
尿検査
腎臓の機能が低下すると、尿中に老廃物や血、蛋白質が混じります。
主に蛋白尿が症状として見られることが多いため、
腎機能を調べる目的で尿検査が行われます。
腎生検
腎炎のあるSLE患者は全員、受けることを推奨される検査です。
背中から腎臓へ針を刺して組織を切り取り、炎症のタイプを調べるための検査です。
この検査自体はSLE患者以外でもよく行われるものですが、
患者への負担が小さい検査ではないため、重篤な症状が起きている場合は
症状が落ち着くまで検査ができないこともあります。
画像検査
心臓や肺に症状が起きていないかを調べるためのレントゲンや、
その他の症状がないかを調べるためにCT、MRI、超音波などの検査が行われます。
頭部、腎臓、足と症状によって様々な部位に対して行われる可能性があります。
その他
生理学的検査と呼ばれる、心電図や筋電図などの検査が行われます。
高熱や頭痛が強い場合は、中枢神経を調べるため脳シンチグラフィ等の脳波測定が行われることがあります。
如何でしたでしょうか。
自分の受けた治療を中心とした知識のため、一部偏りや間違いがあるかもしれません。
気付いたことがあればメールやSNSなどでご連絡いただけましたら幸いです。
少しでも病気への理解を深めるための一助になればと思います。
<参考文献>
アニータ・コース「自己免疫疾患の謎」(青土社、2019/11/26)
公益財団法人「全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)ー難病情報センター」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/53
MSD「Systemic Lupus Erythematosus - 08. 骨、関節、筋肉の病気 - MSDマニュアル家庭版」
全身性エリテマトーデス(SLE) - 08. 骨、関節、筋肉の病気 - MSDマニュアル家庭版
Sanofi K.K.「全身性エリテマトーデスとは SLE.jp」
https://www.sanofi-sle.jp/know/disease_about
順天堂大学医学部付属順天堂医院「全身性エリテマトーデス | 膠原病・リウマチ内科 | 順天堂医院」
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_04.html
帝京大学医学部「全身性エリテマトーデス | 帝京大学医学部内科学講座リウマチ・膠原病グループ/研究室」
http://www2.med.teikyo-u.ac.jp/rheum/?page_id=26