SLE患者の徒然日記。

全身性エリテマトーデス(SLE)に関連する色々なことの掃きだめ。

SLEの闘病生活 その7

お久しぶりです。
最近なぜか見てくださる方がたくさんいらっしゃるようで、
せっかくでしたら続きを書こうと思いまして……
続きとか言ってられる以上に間隔空いちゃいましたけどね。ごめんなさい。



※病気に関するお話です。重い内容が苦手な方はご注意下さい。



さて、今や退院してから4年近く経っていることですし、
SLE症状の大きな変化もないので(他の病状はありましたがそれはまた次回)、
今回はお仕事のことについて書いてみようかと思います。


元々、2019年に入院する前まで、わたしは結婚式場で働いていました。
と言っても、いわゆるブライダルプランナーですとか、ドレスコーディネーターではありません。
かっこよく言うなら”ブライダルクリエーター”でしょうか。いやかっこよくないか。

まあ簡単に説明すると、披露宴の最後に流されるエンドロールを作る仕事をしていました。
挙式の1時間前くらいから会場の裏手にパソコンとDVDデッキを持って待機し、
披露宴の中座あたりまでカメラを回し、
終わるまでに暑くて狭苦しい場所で編集を済ませ、
完成したDVDをお客様と一緒に会場でチェックする。そんな仕事です。
1回の結婚式がだいたい4時間くらい、しかもその間はお手洗いに行く余裕もなく、
編集場所と会場の行き来で階段を駆け上がったりするので意外とハードなお仕事です。
ハードだったのはわたしのいた会場だけかもしれませんが。

まあそんな仕事をしていたわけですが、
ちょうど退院した頃は新型コロナウイルスが流行り始めていた時でした。
そんな中でたくさんの人が集まる中を走り回って撮影するような仕事に復帰できるわけもなく
ステロイドを飲んでいると免疫が低下するので、人の集まる所は避けるようにと主治医にも言われていました)
コロナ収まるまでは家で大人しくしてるか~、と休職していました。
悠々自適な実家でのニート生活です。最高。
といっても最初の頃は本当に、1日起きているのもつらい程の体力しかなかったため、
コロナが流行っていなくても復帰は叶わなかったと思います。
長期入院は人間を弱くしますね……。

そしてコロナが収まらないまま1年が経った頃。
復帰の目途も立たずに会社に籍だけを置き続けるのも、
仕事もしていないのに保険料だけを払い続けるのも、
申し訳なさやら色々感じてしまうようになってきました。
そこで会社側とお話をして、
「元気になってコロナも落ち着いてからまた働きたかったら連絡して」
と言われながら退職する決心をしました。
その頃にはステロイドも5ミリ程度まで減り、感染症にはそこまで気をつけなくとも良くなっていたのですが…

体力が全然戻りませんでした。

SLEは、症状のひとつに筋力低下や疲れやすいというものがあります。
健康な人と同じだけの筋トレをしても、寝込むほどに疲れたり半分しか筋肉がつかなかったりするのです。
そのため、階段を駆け上がったりした日には膝関節を痛めるし、
4時間も駆け回って撮影したら翌日は確実に熱を出して寝込みます。
そういった事情で、復職が叶わなくなってしまったのです。

結婚式場でのお仕事は、不満がまったくなかったとは言いませんが、
本当に楽しくて大好きなお仕事でした。
2度ほど転職を重ね、ようやく自分の好きなことを仕事にできていたのですが、
まさかこんな理由で続けられなくなるとは思わず、当時は本気で泣くほどでした。


それでも幸運だったのは、
コロナ禍のおかげでリモートワークが増えたこと。
この記事を書いている今でも、フルタイムで働くほどの体力は戻っていません。
しかし、週3日の在宅勤務程度であれば、なんとかこなせるくらいにはなっています。
そのため、今年の3月頃から、とあるYoutubeチャンネルの動画編集のアルバイトを始めました。
バイトしかできない我が身が悔しいところではありますが、まあ何もないよりマシでしょう。
病院の費用とかもありますし。難病手当の数倍かかるもんアレ。

実際のところ、障害者向けのお仕事紹介はたくさんあっても、
難病患者が働こうとなると色々な点で整備が進んでいなかったり、
正社員と同じ扱いしかないため不可能だったりと色々難しい点が多いです。
せめて入院前と同じ程度の体力があれば、と枕を涙に濡らすこともありましたが、
まあ現実として無理ならフリーターで食いつないでいくしかないかなと最近は開き直っています。
元々頭脳系の仕事しかできなかったので(運動好きじゃないし)、それで首の皮一枚繋がった感じですね。


さて、真面目に書きすぎてしまったので今回はこのあたりで。
同じようにお仕事で悩まれている方がいらっしゃれば、参考程度に見てもらえたら嬉しいです。

SLEの闘病生活 その6

※病気に関するお話です。重い内容が苦手な方はご注意下さい。


退院した翌日。
階段を昇ることすら大変なので、リビングに布団を敷いて
ほとんど一日中ゴロゴロして過ごしました。
というのも、入院中の2か月の間に体力の限界が1/10くらいになっていて、
お昼寝をしないとすぐにエネルギー切れになってしまうのです。
元々体力が少な目だったのもあり、本当に一瞬で疲れてぶっ倒れます。
多分シャトルランとかやったら10回も走れなかったんじゃないでしょうか。
だって一番体力があったはずの高校の頃でも30回行かなかったし……。

そして、噛みつかれないように少しづつ猫との距離を縮めながら布団に潜り込み、
やっぱり家の布団の方が眠りやすいなぁと思いながら目を閉じて数時間。

激痛に飛び起きました。
時間は5時前くらいだったでしょうか。
ステロイド減ったしまた膝が痛くなるんじゃないかなぁ、
と思って寝る前に鎮痛剤を服用したのですが
全く効きませんでした。なんかデジャヴ。
それから10分もすると、あまりの痛みに呼吸すらできなくなってきて
スマホを持つことすら儘ならない状態になってしまいました。
とりあえず壁をドンドンと叩いてみると、
「痛いって言うんじゃないかと思ってよく眠れなかった」
という母が起き出してきました。

すぐに病院に連絡がとられ、救急車を呼んで病院に来るように、と指示がされました。
けれど救急車を待つ時間も惜しい(というより耐えられない)ため、
車で向かうと告げて再び父に背負われて自家用車へ。
ちょっとした振動で発狂しそうになる痛みを堪えながら病院に到着すると、
救急外来には入院中の担当医が2人、既に待っていました。
車椅子に乗せられてまずは採血。
苦痛で体中が強張っていたからかなかなか血管が見つからず、
あとからもう1本追加で採血されました。
仕方ないじゃん力抜いてなんて無理だし!ごめんね先生!!
それからレントゲンにも回されましたが、
足が痛くて動けないというのに、何度も体勢を変えて色々な方向からレントゲンを撮るわけです。
3人がかりで持ち上げられたりひっくり返されたりしながら30枚ほど撮影して、
やっと解放されて車椅子で待合室に戻されます。

その頃になってやっとステロイドが効いてきたのか、
なんとか会話ができる状態くらいまでは痛みが落ち着いてきました。
入院中よりは少しマシな痛みかなぁ、などと思いながら待つこと約1時間。
両親とともに中に呼ばれて、救急外来の一角に通されました。
どうやらそこは最初に私が搬送された時にいた場所だったようで(記憶にないけど)、
救急対応専用のスペースだそうです。ちょうど空いててよかったわ。
そうして渡された検査結果を見てあらびっくり。
順調に下がっていたはずの「炎症値」が跳ね上がっているではありませんか。
曰く、ステロイドを減量したことで病気の勢いが抑えきれなくなり、
再び痛みが出てきたとのこと。
全然収まってないんじゃん……と遠い目になりながらも
原因がわかったことにはひと安心です。

朝にだけ飲んでいたステロイドを朝晩に分けて5mg増量することに決まり
鎮痛剤の追加を貰ってその日はそのまま帰ることに。
一番に思ったのは「また入院にならなくてよかった」
ということです。
プライムビデオのアプリ、アンインストールした直後だったから暇になっちゃうもん。

そんなこんなでやっとのこと、
何を食べても美味しいけど微熱とだるさに悩まされる平和な毎日が戻ってきました。

SLEの闘病生活 その5

※病気に関するお話です。重い内容が苦手な方はご注意下さい。


「滑膜炎」という新しい症状が判明して以来、
外来で担当してくれていた先生が、毎日のように様子を見に来てくれるようになりました。
少しだけ膝に溜まっている水を抜いて薬を入れることもできるけど、
それをやるとかなり痛いしそこまで痛み引かないと思うけどどうする?
と親切に聞いてくれて、私は謹んでお断りしました。

曰く、
関節炎に効く薬は効果が発現するまでに1~3か月ほどかかるそうで、
それまでは痛み止めで我慢するのがSLEの一般的な治療法だとのことです。
いつ効いてくるかわからない薬を飲み続けながら痛みに耐えるなんてどんな拷問ですか、
と思いながらも
どうしようもないのでおとなしく
ローソンでゴディバの限定ショコリキサーをこっそり買って
たっぷり飲んでストレスを発散していました。
ステロイドって血糖値上がっちゃうからあんまり甘い物食べすぎると注射されちゃうんだけどね。
まあ測定しない日ならちょっとくらい甘い物食べてもいいかなって……。

毎日足は痛いものの、痛み止めを飲んでいれば車椅子で動き回れるくらいに回復してきました。
週に何度かある採血の度に、
「経過は順調です」
と言われ、このまま順調に回復していけば年内に退院できるかもしれない、
と嬉しいお言葉を頂きました。
この時で入院してから1か月ほどで、当初は2~3か月の入院と言われていたため
想定よりも順調に回復していたということなのでしょう。
実際、病気の強さを表す数値は検査の度に下がってきていて、
足の痛みが出た日だけ数値が跳ね上がってまた下がるという素晴らしい経過を示していました。
順調に薬が減っているというものの、薬減らしたタイミングで悪化するなら
それ順調って言えるのかな……と一抹の不安を覚えつつも
そろそろ病室でSwitchとPSPだけで過ごすのも限界だったので
退院を目指して足のリハビリなどに励むことにしました。

……と、心に決め、
足の調子が比較的良い日を選び、久しぶりに車椅子ではなく自分の足で検査に向かったところ、
その日の晩は疲れ切って熱を出しました。
体が弱りすぎていてびっくりです。
1000歩も歩いてなかったのに。

そこからは本当に何もない毎日でした。
検査があったり、診察があったり、たまにレントゲン撮影があったり。
12月14日には更にステロイドの量が減り、
朝4錠、夜4錠の計40mgの投与に変更されました。
昼の分の投薬がなくなるとまた痛みが出るのでは、と戦々恐々としていましたが
この時は全然、体調に変化はありませんでした。
相変わらず朝や夕方に謎の熱が出ることがあるくらいで、
19日に3度目のエンドキサンの投与をし、その後1週間経過を見て問題がなければ
退院にしましょう、と言われるようになりました。

担当医のうちの半分はすぐにでも退院させたがり、
半分は様子見をしたほうがいいと言い、
どうすればいいのかわからなかったので担当医の中で一番偉い人っぽい方に丸投げしておきました。
「退院したいけど、またぶり返して再入院になるのも嫌です」
と言ったら苦笑されました。

そして病院で迎えるクリスマス。
こんなツリーが飾ってありました。

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院内は無機質だから季節感を感じさせようという配慮なのでしょうか?
あと病院の看護学生さんがクリスマスカードをくれました。
これは素直に嬉しかったです(夏休みの課題で描いたって裏事情聞いてちょっと笑ったけど)。

そして12月の26日。
晴れて退院となりました。
午前中に血液検査を受け、異常がないことを確認された上で13時頃に病室を出ました。
そして病院に併設されているレストランで久しぶりの外食。
健康的で薄味な料理に慣れた舌には何を食べても絶品に感じられました。
というか本当に美味しかったんですけどね。有名なレストランだったらしいし。
それから父親の車で家に帰ると、
家のとなりに新築の一軒家が完成していました。
入院前はまだ足場しかなかったのに……
更地の状態から写真撮り続けてタイムラプスみたいにしようと思ったのに……
まさかの帰宅したら完成してたなんて……!!
それに猫にも忘れられてました。
抱っこしようとしたら「シャー!」って言われてめちゃくちゃ凹みました。

それはさておき。
退院した翌日から、ステロイドの量が30mgに減りました。
元々、感染症の危険性などの面から
一度入院したら、30mg以下の投与量にならないと退院はできないと
入院する前に説明を受けていました。
そのため、退院するときに30mgに減量されたわけです。


退院してすぐに減らしちゃって大丈夫なのかなぁ、
足の痛みもまだとれてないんだけどなぁ、とは思っていたのですが……
大変そうなお話はまた次回!

SLEの闘病生活 その4

※病気に関するお話です。重い内容が苦手な方はご注意下さい。


毎日ベッドの上で本を読んだりゲームをしたり、
差し入れで貰ったチョコレートをこそこそを食べる優雅な毎日が2週間ほど続き
気付けば暦が変わろうとしていました。
12月に入って3日、この日から投与される薬の量が少しだけ減りました。
それに伴い、
今までは朝8錠、夜4錠飲んでいたステロイド剤が
朝10錠飲むだけになりました。
「だけ」と言っても相当な量だし他の薬もあるから実際のところ一気に15粒くらい飲んでましたが。

ちなみにステロイド剤は1粒5mgで、
60mg、12粒から始まり5~10mgづつ投与量を減らしていきます。
2週間から1か月ほどで様子を見ながら減量していくのですが、
1日に1回の服用にした方が副作用(ムーンフェイスなど)が出づらいということで
この日から朝だけの服用に切り替わったのです。


やっと薬が減ったね、良かったねと思えたのはその日だけでした。


その日の夜。
病院の消灯は21時という早い時間なので、
いつも消灯後にアマ○ンプライムでアニメや映画を観てから眠りについていました。
ただでさえ夜型人間な上にステロイド剤の影響で体が火照るため、
夜は日付が変わるまで眠れないのが常でした。

しかしその日は少し様子が違っていました。
11時近くになり、寝返りを打とうとすると左膝に微妙な違和感。
実は私は生まれつき膝が少し悪いため、夕方から夜にかけて膝が痛むことがよくありました。
今回もきっとそれだろう、と判断し、
他のことで意識逸らそうとア〇プラで「四月は君の嘘」を見始めました。
あれはアニメ版は大好きなんですが実写版は苦手です。
やっぱりアニメの実写って成功しないもんですねよね。
とか思いながら4話くらいまで見ていましたが、膝の痛みは治まりません。
それどころかどんどん痛みが強くなっていきます。
どうやらこれは持病の痛みとは違うようだ、と気づいたのは日付が変わる頃で
我慢できずにナースコールを押すときにはもう、
痛みで勝手に足が痙攣するほどの激痛になっていました。

そして貰った鎮痛剤。
これがまた全然効きません。
鎮痛剤の中でも一番弱いものしか投与できないそうで、仕方なかったのですが……。


その時は入院した当初の8~9割くらいの激痛で、
熱がなく意識がはっきりしている分逆に辛いという状況でした。
口から勝手に呻き声を漏れるのを他人事のように聞きながら、
意識を失うように眠ったのが3時半過ぎ。
痛みでまた目が覚めたのが5時前でした。
起きると同時に激痛に叫びそうになり、慌ててナースコールを押すものの
痛みでまともに喋ることもできなかったため、
起床時間になっていないのにも関わらず、看護師さんが担当医に連絡をとってくれました。

きっとステロイド剤の飲み方を変えたことが原因だろうとのことで、
とりあえず急いで朝の分の薬を飲むように、との指示が出されました。
数時間して薬が効いてくれば痛みは治まってくるだろう、と言われ
起き上がることもできないままなんとか薬だけ飲み込みます。
辛うじて薬を飲むのを確認されると、ヘルパーさんに2人がかりで車椅子に移され、
そのまま救急棟にあるレントゲン室に運ばれました。
そしてまた複数人に持ち上げられたりひっくり返されたりしながら、
何枚も膝のレントゲンを撮られます。
動くこともできないのに向きを変えて何枚も写真を撮られるという地獄の時間でした。

そうしてまた病室のベッドに戻ると、またすぐに担当医がやってきて
膝を押したり曲げたりして確認した後(これでまたちょっと痛みが増したとか言えない)、
・体内のステロイド濃度が下がったこと
・エンドキサンの効果が薄れてきていること
が原因でしょう、とのありがたい結論をいただきました。
そんなことよりもっと強い痛み止めをくれ、と思いつつも
だんだん効いてきたステロイドのおかげで、なんとか喋れる状態までは痛みが収まっていたので
予定を早めて明日2回目のエンドキサン投与をしましょう、という医師の言葉に
とりあえず了承の意だけ示しておきました。


そうして翌日、また激痛とともに目を覚ましながらエンドキサンの投与を受け、
そのまた翌日も痛みに耐えながらエコーによる足の検査を受けました。
教授回診とやらで何度か顔を見かけていた偉そうな先生(実際めちゃくちゃ偉い人)が
他数人の医師と一緒にああでもないこうでもないと言いながら私の足に超音波を当てて、
「滑膜炎」だと診断してくれました。
どうやらSLE患者に一般的にみられる症状ではないようで、
お偉いさん……ではなく教授の先生くらいしか症状に関しては詳しくないようでした。
後で医学に詳しい友人に聞いたところによると、
滑膜炎は「相当に痛い」という情報をくれました。
身をもって知ってた情報だったんだけどねそれ。

そうして無事に原因不明の激痛の原因が特定され、
病室に車椅子が置かれたことで腕の筋トレができるようになり、
ステロイドの飲み方が朝4錠、昼4錠、夜2錠に変わり、
ようやく激痛からは解放されたのです。


実際のところ、その翌日から今日に至るまで足の痛みは消えていないわけですが
続きはまた次回ということにしておきましょう。

全身性エリテマトーデス(SLE)とは

素人が素人のためにまとめた素人のための全身性エリテマトーデス(SLE)情報です。
※あくまで一般人の知識です。内容に間違いがある恐れがあります。

全身性エリテマトーデス(SLE)とは


膠原病こうげんびょう」の一種です。
全身性エリテマトーデスは英語で「Systemic Lupus Erythematosus」と言い、
一般的にはその頭文字をとって「SLE」と呼ばれます。
Lupusループス」はラテン語で「狼」という意味があり
狼に噛まれた痕のような紅斑が皮膚に現れることから、この名前が付けられたといいます。

難病指定されている自己免疫疾患の一種であり、原因や治療法は今のところ確立されていません。
症状の悪化と寛解かんかい(落ち着いている状態)を繰り返していく病気です。
私達の体には「免疫」と呼ばれる機能がありますが、その免疫機能に異常が起きてしまうのがSLEです。
「自己抗体」という、自分の体を攻撃する物が体内に生成されてしまい
それが原因で全身に様々な症状が引き起こされてしまうのです。

SLEの患者数は、全国に6~10万人とされています。
そのうち、男女比は1:9~1:10ほどで、中でも10代後半~40代の女性の発症率が非常に高く
妊娠可能な年齢の女性に発症しやすいのではないか、と言われています。

症状

全身症状

発熱

症状が悪化した際に38度以上の発熱が起きやすいです。
偏頭痛を伴うことも多いです。

全身倦怠感

非常に疲れやすくなります。
筋力の低下や、原因の不明な体重減少なども症状の一つです。
同時に食欲不振になることもあります。

皮膚症状

紅斑

「SLE」の名称の由来にもなった、
狼に噛まれたような跡の紅斑が皮膚に現れることがあります。
最も有名なのは、頬に現れる「蝶状紅斑」と呼ばれるもので
両頬に蝶が羽を広げたような模様の発疹が現れます。
頬以外にも、まだら状や斑点状の赤い発疹が現れることがあります。

光線過敏症

特に皮膚の色素が薄い人に、日光に対する過敏症が起きます。
スキーや海水浴などで強い紫外線を浴びた後に、
症状が悪化することがあります(全体の約40%)。

レイノー現象

冷たい水に触れた際など、寒冷刺激を受けた場所だけ局所的に皮膚の色が変わる現象です。
全身性強皮症や関節リウマチなどの、他の膠原病の場合にも見られる症状です。

口内炎

口の奥や硬口蓋、頬の内側に潰瘍ができます。
多くは粘膜が抉れたように凹んだもので、痛みを伴わないことが多く
人に指摘されるまで気づかないこともあります。

脱毛

朝起きた際、枕にたくさんの髪の毛が付いていたり、
円形脱毛が起きたり、髪の毛の量が減ることがあります。
毛髪自体が傷みやすくなることもあります。

関節痛・関節炎

ほぼ全てのSLE患者にみられる症状(約9割)です。
指や肩、肘、膝などに腫れを伴った痛みが起きることがあります。
日によって痛む関節の場所が変わる(移動性)こともあります。
関節リウマチのように骨破壊は伴わないため、後遺症は残りません。

腎障害

8割以上のSLE患者に、腎臓の病変が起こります。
約半数は「ループス腎炎」と呼ばれる腎炎で、悪化すると命に関わることもあります。
急性期の症状として現れるのは蛋白尿や血尿で、
これも自覚症状が現れないことが多いため注意が必要です。

その他

心・肺症状

心膜の炎症による胸痛(心膜炎)は比較的起こりがりな症状で、
胸膜炎も同時に発生することがあります。
肺に症状が現れることはほぼありませんが、
活動期には肺繊維症やループス肺炎、肺胞出血などの
致死性の高い症状が現れることもあります。

精神・神経症

中枢神経に障害が起きます。
うつ状態や妄想などの精神症状、
片頭痛や脳血管障害などが多くみられます。
急性期には痙攣や意識の消失などが起こることもあります。

治療法

ステロイド

魔法の薬と呼称される、副腎皮質ステロイド薬が使用されます。
ステロイドを使用しなかった場合、5年生存率は50%以下となってしまうため
なくてはならない薬となっています。
ステロイドは健康な人の体内で1日に約5mg生成されている物質で、
重症の場合は80mg以上から、軽症なら5mgまで症状に合わせて経口投与します。
ステロイド抵抗性の高い腎炎や血小板の減少、溶血性貧血や肺炎などの重篤な症状がある場合や、
副作用などの問題で大量のステロイドを長期投与することができない場合は、
3日間連続で500~1000mgのステロイドを点滴投与する「ステロイド・パルス療法」が行われます。
1日に5~10mg程度のステロイド剤の服用で症状が悪化しない状況が
SLE患者の目標とされる寛解の状態とされています。

ステロイド剤の副作用としては、顔が丸くなる満月様顔貌(ムーンフェイス)や、
食欲増進、糖尿病、感染症骨粗鬆症などがあります。

ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)

解熱剤、鎮痛剤などです。
発熱や痛み等の症状を和らげるために使用されます。
重篤な症状が現れていない場合や、関節炎などの局所症状が特に強い場合に用いられますが
消化管や腎臓への影響が起きることがあるため、必要に応じての投与になっています。

免疫抑制薬

ステロイド剤の効果が不十分な場合や、副作用が強い場合に使用されます。
代表的なものとして、シクロホスファミド(エンドキサン、抗ガン剤のこと)の点滴投与や、
最近使用が認可されたミコフェノール酸モフェチル(略称MMF、セルセプト)などがあります。
即効性があって特に重篤な腎炎や肺炎に効果的なものはシクロホスファミドですが、
生殖器障害等の副作用がとても強いため、緊急性が低い場合は
ミコフェノール酸モフェチルの使用が推奨されるようになってきています。

免疫調整剤

マラリア薬として知られている、ヒドロキシクロロキン(プラケニル)の使用が
日本では2015年から認可されました。
なぜ効果があるのか判明していませんが、免疫疾患への効果がある薬剤です。
特に皮膚や関節症状への効果が高いとの研究結果が出ています。
しかし副作用として視力の低下や失明が起こるリスクがあるため、
この薬を服用する場合は半年~1年に1度の眼科受診が義務付けられています。

その他

SLE患者の一部は血栓ができやすくなるため、
低用量のアスピリン投与などの抗凝固療法が行われることがあります。

病勢を抑えるためには免疫機能を落とさなければならないため、
感染症への耐性が非常に低くなります。
そのため、投与される薬剤の量が多い場合は、感染症の予防薬が同時投与されます。

特に重症な腎症状や神経症状、肺出血や血小板減少等を伴った重篤な症状が発現した場合、
血漿交換療法が行われます。
病気の原因となっている自己抗体が血漿内に存在するため、
その血漿を抜いて健康な人の血漿と入れ替えるという治療法です。

検査

血液検査

採血による検査があります。

「抗核抗体」が陽性であれば、SLEである可能性が高いとされています。
抗dsDNA抗体、抗Sm抗体などが陽性の場合、SLEであると診断されやすくなっています。

SLEの場合、「補体値」が低下します。
補体は免疫細胞が働くときに使用される物質で、
病気の勢いが強い=免疫機能が高まっている=補体がたくさん使われているため、
血中の補体の量が減少します。
そのため、病気の強さを調べるために血中の補体の量を測定します。

赤血球、白血球、血小板の低下がみられることがあります。
健康診断でも貧血かどうか調べられますが、それよりも詳しく、
リンパ球の数や血球の奇形が存在しないか等も検査します。

その他にも、炎症が起きていないか、臓器への障害がないかなどの
様々な症状を調べるために血液検査が行われます。

尿検査

腎臓の機能が低下すると、尿中に老廃物や血、蛋白質が混じります。
主に蛋白尿が症状として見られることが多いため、
腎機能を調べる目的で尿検査が行われます。

腎生検

腎炎のあるSLE患者は全員、受けることを推奨される検査です。
背中から腎臓へ針を刺して組織を切り取り、炎症のタイプを調べるための検査です。
この検査自体はSLE患者以外でもよく行われるものですが、
患者への負担が小さい検査ではないため、重篤な症状が起きている場合は
症状が落ち着くまで検査ができないこともあります。

画像検査

心臓や肺に症状が起きていないかを調べるためのレントゲンや、
その他の症状がないかを調べるためにCT、MRI、超音波などの検査が行われます。
頭部、腎臓、足と症状によって様々な部位に対して行われる可能性があります。

その他

生理学的検査と呼ばれる、心電図や筋電図などの検査が行われます。
高熱や頭痛が強い場合は、中枢神経を調べるため脳シンチグラフィ等の脳波測定が行われることがあります。

如何でしたでしょうか。
自分の受けた治療を中心とした知識のため、一部偏りや間違いがあるかもしれません。
気付いたことがあればメールやSNSなどでご連絡いただけましたら幸いです。
少しでも病気への理解を深めるための一助になればと思います。


<参考文献>
アニータ・コース「自己免疫疾患の謎」(青土社、2019/11/26)
公益財団法人「全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)ー難病情報センター」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/53
MSD「Systemic Lupus Erythematosus - 08. 骨、関節、筋肉の病気 - MSDマニュアル家庭版」
全身性エリテマトーデス(SLE) - 08. 骨、関節、筋肉の病気 - MSDマニュアル家庭版
Sanofi K.K.「全身性エリテマトーデスとは SLE.jp」
https://www.sanofi-sle.jp/know/disease_about
順天堂大学医学部付属順天堂医院「全身性エリテマトーデス | 膠原病・リウマチ内科 | 順天堂医院」
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_04.html
帝京大学医学部「全身性エリテマトーデス | 帝京大学医学部内科学講座リウマチ・膠原病グループ/研究室」
http://www2.med.teikyo-u.ac.jp/rheum/?page_id=26