SLE患者の徒然日記。

全身性エリテマトーデス(SLE)に関連する色々なことの掃きだめ。

SLEの闘病生活 その2


※病気に関するお話です。重い内容が苦手な方はご注意下さい。


8日の時点で三途の川を渡りかけていた私ですが、
その日のうちにステロイドの投与が開始され、
ようやく苦痛からは解放されました。
体中が痛くても、頭痛と高熱がないだけで本当に楽になりました。
いやーほんとによく頑張ったわ私。誰か褒めて。

SLEの関節痛は基本的に「非破壊性」のものなので、
痛みはあっても変形や後遺症の出るような状態にはなりません。
(一部、破壊性の関節炎が起こる方もいるようです)
そのため、点滴やら心臓・酸素の計測器やらを繋がれながらも
10日までの三日間、薬剤投与をされ、なんとかギリギリで間に合ったねーと
医師も両親もお祝いムードに移行しかけていたところでした。


この後元気になってきたら腎臓の検査もしなきゃいけないね、
それから脳の検査と心臓のエコー検査と眼科と……等と、
まだ熱があるのに10枚近い説明書と同意書を見せられて、
車椅子のうえでゲンナリしていたのが10日のこと。
まだスマホを持ちあげることもできない程、
手にも力が入らない状態だったので
同意書は全部父が代筆しました。
「まず使うことはないだろうけど」
と医師には言われながら、念のためということで
輸血やら透析やら、抗ガン剤治療やらの説明も受けました。

担当医の先生がとても慎重な方だったので、
もしかするとこういうこともあるかもしれないし
万が一にはこんな危険もあるかもしれない、
まあ確率としては5%もないけど、
というようなことまで説明してくれました。
その時は
「必要な事なのはわかるけど不安煽らないでほしいな」
などと思っていたのですが、
この時説明を受けていなかったらと思うとぞっとしました。



と、いうのもですね。


12日の朝のことです。
39度を超える高熱、そして口の中に血の味。
うがいをしたらその水には血が混じり、
お手洗いに立つだけで視界が暗転して立っていられなくなりました。
明らかに様子がおかしいから、と即座に採血とレントゲンに回され
そこで新たな症状が出ていることが判明しました。


それが、

肺胞出血

というものです。


肺胞出血というのは、
文字通り肺の中で出血している状態です。
本来は酸素を取り込む場所が、血で満たされて息ができなくなってしまうわけです。
SLEの病勢が非常に強い場合にだけ起こりうる症状で、
発症割合はSLE患者全体の3~5%程度とのことです。
そして、肺胞出血をしてしまうと、死亡率は25~50%
今ここにいる私は50~75%側に入れたということです。危なかった。

面会時間になって両親がやってくると、
車椅子に乗せられて説明室に運ばれ
レントゲンの写真を見せられました。


「右の肺の下の方で出血しているようです。
 肺の中を覗いて洗浄し、
 肺胞出血と確定したら血漿交換療法を行います。
 場合によってはその後エンドキサン投与も考慮します」


と説明をされました。
血漿交換ってことはつまり輸血、透析ってことですね。
血液の中の血漿だけを取り換える処置だそうで、
詳しいことはよくわかりませんが血漿を取り換えると肺胞出血が治まるらしいのです。
このあたりの説明はかなりの高熱+酸素不足の中でされたので
あまり詳細は覚えていません。まあ当然か。


そしてその翌日、気管支鏡という器械を口から肺のなかに突っ込んで検査をされ、
肺の中を洗ったら出てきたという真っ赤な血液の入った試験管を見せられました。
それだけ聞くと

「痛そう!!」

とか思われそうなところですが、
胃カメラと違ってカメラを入れる前にがっつり麻酔をかけられるので
痛くも痒くもありませんでした。
口の中と喉に感覚がない状態なので、肺の中を洗浄している時だけ
多少の息苦しさと咳き込みそうな感覚があったくらいです。
加えて、かなり強い麻酔を投与されるため、検査中は朦朧とした状態でした。
そもそもほとんどの人は検査中寝ているとのことで
私が起きていたのはただの好奇心のためです。
だってどんなことするのか気になるじゃん。貴重な体験だし(?)


その検査で、やはり肺胞出血をしているということが確定。
13日から血漿交換療法をすることになりました。
気管支鏡の検査の直後に家に電話で一報入れられていたそうで、
後から両親に

「朝一に病院からの電話が来るのは心臓に悪い、何かあったのかと思った」

と言われました。
実際何かあったんだけどね!死にかけてたわけですから!!


そして朝食が運ばれてくるような時間に両親がやってくると、
すぐに病状の詳細な説明がされました。
右の肺が血だらけで酸素が取り込めない状態になっているため、
本来なら99~96%の血中酸素濃度が92%程度になっているとのこと。
ヘビースモーカーでも、最悪でも94%くらいはあるそうで
通常状態より3-4%下がってしまうと「何らかの急性疾患」が起きていると判断されるそうです。
90%を下回ったら酸素吸入器を繋ぐよ、と言われましたが
その時は吸入器は使わずに済みました。
あれ苦しいって聞くから回避できてよかったわ。

けれど、やはり体に酸素が足りていないのは確かだったようで
その日の夕方、トイレに行って用を済ませたものの、
便座から立ち上がろうとしたところで息が詰まって眩暈に襲われてぶっ倒れました。
ナースコールのおかげで事なきを得ましたが、
それ以降お手洗いも看護師さんに付き添われることになりました。
どんな羞恥プレイですかって感じだけど命には代えられませんね。
吸入器使う? と何度か聞かれましたが遠慮しておきました。
今思えばせっかくの機会だから使ってみればよかったかなって……。


13日になると、朝食を摂るやいなや透析室へ運ばれました。
「痒みとかのアレルギー症状が出る人が大半だから気になったら言ってね、
 もしも血液の出が悪かったら言うからこれをにぎにぎしててね」

と握力を鍛えるゴムまりのようなものを渡されながら軽い説明をされ、
朝一に両腕に貼られていた麻酔のシールを剥がされるとぶっとい針を突き刺されました。
採血の針よりよほど太いものなのに、
麻酔のおかげか痛みは採血と同じくらいでした。
でもなんか左腕の方が痛かった。
血管の位置で痛さが違うらしいけど左腕だけは痛かったよ。

そうして血漿交換が始まります。
右腕に挿した針から血漿を抜き、左腕から健康な人の血漿を流し込む作業です。
どうやら私は血管が細めのようで、瀉血だけつ(血を抜くこと)に時間がかかると言われました。
そのため右手でボールをずっとにぎにぎしていました。
ツムツムもできないくらい力が入らないし手が痛いのに、です。

キツいわ!

その状態で3時間。
後半の1時間半くらいは気づいたら寝ていたのですが、
終わった時には体温が上がって身体中がだるくなっていました。
幸運にもアレルギー症状は出ませんでしたが、
体の中の物が丸ごと取り換えられるわけですから非常に疲れるんです。
週に何度も透析受けないといけない人は本当に大変だろうなと身をもって思いました。


それが3日連続です。
3日連続で、血漿交換をしたのです。
めちゃくちゃしんどかった……。

どうやら血漿交換療法というのは月に4回までしか保険適用内ではできないそうで
何かあった時のために、と1回分残して3回で一旦終了、
ということになっていたそうです。
病気の種類によっても保険適用の回数等は違うらしいんですが
詳しいことは知りません。もっと知りたかったらggって。


その血漿交換のおかげで、なんとか肺の出血は治まったらしく
熱も下がり、咳き込みも減ってきました。
でも、入院中で一番きつかった治療はこれでした。
二度とやりたくないくらいキツかった。
しかも3日目だけアレルギー症状が出てちょっと手と顔が痒くなったし。
血漿交換をするとカルシウムが減るとかで歯に電気流れてるような感覚になるし。
もともと低血圧だから血漿交換で血圧上がるとふわふわしちゃうし。
とにかくきつかったです。

しかしまあ、これでなんとか二度目の命の危機は去ったわけでした。
かろうじて。