SLE患者の徒然日記。

全身性エリテマトーデス(SLE)に関連する色々なことの掃きだめ。

SLEの闘病生活 その3


※病気に関するお話です。重い内容が苦手な方はご注意下さい。


血漿交換療法と前後するように、
「シクロホスファミド(エンドキサン)」の点滴も始まりました。
簡単に言ってしまえば抗ガン剤の投与です。
抗ガン剤というのは細胞分裂を妨げる効果のある薬剤のことだそうで、
SLEは免疫細胞が異常に活性化してしまっている状態なので
それを抑えるために抗ガン剤が効くそうです(素人の意訳)。

とはいえ、ガンの患者さんに投与する量に比べたら
SLE患者に投与されるエンドキサンの量はとても少ない(らしい)です。
それもどうやらアメリカの治療方針だとこれくらいで
ヨーロッパ系だとこれくらい投与するのが良いとされていて
とか色々あるらしいのですが、無駄に長くなりそうなので割愛します。
(もし同じ病気だから詳しい投与量とかが気になる、って方がいたら直接聞いてきてください)


この「エンドキサン」は、
当然ながら劇薬なので色々な副作用も起こります。
髪の毛の量が減ったり、
女性でいえば不妊の確率が上がってしまったり。
命には代えられないので仕方ないですが、
自分は髪の毛の量が半分くらいになりました(投与が終われば毛量は戻ってきます)。
元々が多かったから乾かしやすくて丁度いいくらいなのが救いですが。
そのため、できる限り医師もエンドキサンを使わないで済むような治療を推奨してきます。
SLE患者の8割以上は腎臓に炎症が起きるのですが、
その腎臓に効くだけのお薬なら別の物が存在します。
そして、たとえば関節炎に効くならこれ、
心膜炎に効くならこれ、というように
エンドキサンに代わる薬も当然ながら色々と存在するのです。
ですが、重態かつ肺胞出血に一番効果があるのがエンドキサンだということで、
年齢的にも若いからあまり使いたくないのだけどと言われながら
また何枚かの同意書を書いて、点滴をしてもらいました。


こんな怖いようなことも色々と書いてみましたが
点滴自体は特に問題もなく、普通に終了しました。
ただ、点滴を投与する日の朝に身長と体重を測られ、
投与の数時間前から夜まで一日中生理食塩水の点滴が追加され、
エンドキサンの点滴中(約1時間)は15分おきに看護師さんに体温と血圧を測られ……
と、非常に面倒な治療でした。
多分面倒なのは私自身よりも担当してくれた看護師さんだったと思いますけどね!
だって私ほぼ寝てるだけだったから!!

どうやら人によっては、
吐き気があったり高熱が出たり、
血圧が上がりすぎてしまったりという副作用が出ることもあるそうで
投与中は基本的に看護師さんとの楽しいお喋りタイムでした。
担当してくれた看護師さんとは最寄り駅がお隣ってことを知りました。世界って狭いね。


そんなこんなで大きな治療がひと段落。
微熱は続くものの、なんとか動けるくらいには回復したため
脳や腎臓の詳細な検査を進めようということになりました。
それが、大きいものだと2つ。
一つ目は、
搬送されてきた当初がものすごい高熱だったため、
脳の血流が低下している恐れがあるとのことで
少量の放射性物質を点滴に混ぜて、MRIのような専用の機械に入って
脳の血流量を調べるという「脳血流シンチグラフィー」という検査。
それから二つ目が、
背中から針を刺して腎臓の組織を切り取り、
その組織を見る「腎生検」という検査。


一つ目の脳の検査は、11月の20日に行われました。
前日の点滴にちょっとだけの放射性物質とやらが混ぜられていて、
20日は朝ご飯を食べ終わってすぐに車椅子で運ばれ、
薄暗い部屋でアイマスクをつけて横になるように指示されました。
その状態で15分から30分くらい目を閉じ、
脳の血流が安定してから専用のカメラで血流量を測定するそうです。
リラックスしててね、寝てていいからね、と言われたものの
食べてすぐに寝れるわけないじゃないですか。寝たけど。
終わりましたよー、と起こされたのが30分ほどしてからで、
合計しても1時間くらいの簡単な検査でした。
結果、後頭葉の左右に血流低下がみられると言われましたが
大きな損傷や後遺症が残るような状態にはなっていなかったそうです。
頭痛は前より少し多くなるかもしれない、という程度らしく
きっと元気になってくればシナプスが頑張って復活するんだろうな(適当)と思ってます。


そして二つ目の検査。
腎生検。
これが大変な検査でした。できることならもう二度とやりたくない検査です。

Xデーは11月22日(金)。
PM2時からの検査です。
昼食を済ませると、まずは手術着に着替えます。
着替えるのは上半身だけなのですが、面白いことに前後逆に服を着ます。
なぜなら腎臓は背中側にあるので、
うつ伏せになった状態で背中側から検査をするからです。
そして着替えが終わると、カテーテルの挿入処置をします。
これはちょっと嫌だったけどまあ仕方ないですね。
以上で下準備は完了。自分の足で歩いて(車椅子だけど)処置室へ向かいます。
そしてベッドにうつ伏せになり、
まずは超音波で腎臓の位置を確認されます。
首を捻りながら超音波の映像が映る画面を眺めていたのですが、
モノクロの波が映っているだけでよくわかりません。
これが読み取れる医者って職業はすごいなぁと思いつつ、
血圧計と血中酸素量を測る器械を装着します。
そして見せられたのが、検査で使うという針。
ボールペンの芯くらいの太さの針です。
刺すときに大きい音がするからビックリして動かないでね、
と言われてガチャンとその音を聞かされました。
結構大きい音がするんですよねーこれが。
説明されなかったら絶対身動きして大怪我をしそうなくらい。
そして次に呼吸の練習です。
呼吸で腎臓が上下に動いてしまうので、針を刺す瞬間は息を止める必要があります。
そのため、息を吸った状態でどの位置で腎臓が止まるのかを確認しないといけないとのこと。
超音波で確認しながら何度か練習をすると、とうとう本番です。

麻酔を注射され、しばらくその状態で放置。
本番は痛くないけど麻酔はちょっと痛いよ、と言われて痛いなと思いながら刺されました。
でもこの頃にはだいぶ注射慣れ(?)していたので
そこまで苦痛には感じませんでしたが……。
そして15分ほど経って麻酔が効いてくると、
いよいよ先ほど見たボールペンの太さの針を刺されます。


医者「じゃあ刺しますよー、痛かったら言ってくださいね」
私 「お願いします」
医者「……え、筋肉が硬くて刺さらない」
私 「……すみません、ちょっと痛いです」
医者「…………麻酔追加しますね」


ネタじゃないですよ?
本当にあった会話ですよ?
多分、私が合唱をやっていたことが原因なのだと思いますが
腎臓周りの筋肉が異様に分厚く、なかなか針が刺さらなくてとても大変だったらしいです。
結構力を入れられたからか微妙に痛みを感じて、
少し怖かったので麻酔を追加してもらいました。
じわじわズキズキって感じだったので麻酔の追加がなくても問題はなかったとは思いますが。

そして麻酔を追加され、再度針のリベンジ。
硬いなぁ刺さらないなぁと3人くらいに背中を覗き込まれながら、
ようやく腎臓までたどり着きました。
そして先ほど練習したように息を止め、ガシャン!と針が刺される大きな音。
即座にその針が抜かれると血圧を測られ、
同時に結構な力で針を刺した場所を上から押さえつけられます。
息苦しいしアンコが出そうになるくらいでした。割と本気で苦しかったですよこれ。
そしてその状態で15分。5分おきに血圧を測定されます。
腎臓は血管だらけの臓器なので、針を刺したらすぐに
出血が治まるまでその場所を圧迫止血する必要があるそうです。
15分経って、超音波で出血がないことを確認されると、同じことをもう一度繰り返します。
この腎生検では、一般的に2回から3回針を刺すそうで
私の場合は2回でした。針を刺すのが大変すぎて3回は無理と思われたらしいです。
3回の方が一般的って聞くからちょっと面白いですね。

そしてまた潰れた饅頭気分になりながら15分が過ぎると、
絶対に体に力を入れないように、動かさないように、と言われながら
5人がかりでうつ伏せから仰向けにひっくり返され、
そのまま元のベッドに運ばれます。
その状態から、

次の日の朝まで1ミリも動かず安静で過ごさなければいけません。

次の日の朝までですよ。
検査が終わったのが5時前だったので、そこから半日以上です。
首と手だけは多少動かせますが、
腹筋に力が入るような行動は厳禁な上
足なんて動かそうものなら出血のリスクがあるので絶対に動けません。
血栓予防の器械を足に巻かれて、
背中には圧迫のための砂袋を置かれて、
腰がキツい状態で安静です。腰痛持ちの人にはきっと地獄ですよねこれ。

戻ってしばらくして夕食の時間になったのですが、
それも寝たままで食べなければいけません。
食べやすいようにとおにぎりの夕食で、
枕を少しだけ高くしてなんとか口に流し込みます。
お味噌汁もあったけど飲めたもんじゃありませんでした。
この時私はストローでお味噌汁は飲んじゃいけないということを知りました。
咽せて咳したいのにお腹に力入れたらダメとかどうしたらいいの状態に陥ります。
腎生検を受ける予定の方は術後にお味噌汁飲まない方がいいですよ……。


そして夜の9時頃になると、背中に置かれていた砂袋が外されます。
これがないだけでだいぶ腰が楽になりました。
どうやら痛みに耐えられないという患者さんが多いとのことで、
大量の鎮痛剤を渡されました。
でも腰痛持ちでもなく、腎臓が筋肉の鎧に囲まれていたらしい私としては
動けなくて血圧が下がって気持ち悪いという事の方が辛いという特殊な状況でした。
どうやら普通は寝ている間にちょっと身じろぎしたりしていて、
限界まで鎮痛剤を飲んでも腰が痛いと言いながら
針を刺したのと反対側の足をじわじわ動かしているらしいです。

「なんで鎮痛剤使ってないの? ホントにここまで動かなかったの!?」

と朝の担当の看護師さんに驚かれました。
鎮痛剤を使わなかったことがナースセンターで話題にされてたって言うし。
だって動いたら出血するって聞いたら怖いじゃん……?
そんなこと聞いたら動けなくなるじゃん……?
鎮痛剤使わなかったのは単にそこまで辛くなかったからだし……。


そんなこんなで低血圧で迎えた朝。
腎臓からの出血が止まっているかどうかを超音波で確認すると、
やっと安静解除になって朝ご飯です。
……なのですが、
血圧が下がりすぎて動けなかったため、10時頃まで横になっていました。
ようやく起き上がれるようになってから軽く歩行練習をし、
問題がないことを確認してからカテーテルを抜いて服を着替えます。
手術着ってマジックテープ製だからすぐにはだけちゃうんですよね。
その日から3日はシャワーも禁止、
1か月間は腰を捻ったり階段を昇降したりも禁止です。
なんて大変な検査なんだ!!


こんな大変な検査でも、
世界的にSLEの患者は基本的に腎生検をした方が良いとされているそうです。
前述した通り、8割方のSLE患者は腎臓に病変が起きて血尿や蛋白尿が症状として現れます。
もちろん私も例外ではありません。
その病変を「ループス腎炎」というそうなのですが、
これがいくつかの型に分けられていて、その型によって治療法が微妙に異なるそうです。
その型の特定のためには組織を顕微鏡で解析する必要があるので、
腎生検は基本的には必ず行う検査となっているとのことです。

そしてその結果が2週間ほどして上がってきました。
透析一歩手前の一番重症な型でした。
そう聞いた時、
(マジか……)
みたいな反応しかできずに両親と一緒に固まっていたのですが
今現在行っている治療が既に効果的なものなので、
その効果も表れ始めているから心配しないでと言われて少し落ち着きました。
最重症型、って入院してから何度聞いただろうと思うくらい
あらゆる検査で重症認定されるせいで最早笑うしかない感じでした。

腎臓がそれだけやられているはずなのに、食事制限が一切ないのが不思議でしたが
治療はこのまま続くと確定し、大掛かりな検査は一旦これで終了。
暇とも優雅ともいえる入院生活が訪れました。